4月より勤務していたヘマタイト株式会社が2020年10月半ばをもって解散し、私は完全なフリーランスになった。
自分が書いたから言うけど、みんな転職エントリばっかり書かないでこういう振り返りをちゃんとしていけよなと思う。
前に 92thunder がこんなことを書いていて、自分も10月くらいに振り返りエントリを書こうかなと思っていた。ところがその10月になんやかんやあり、職が決まって諸々が公表できるまでおあずけとなり、今日に至った。
今は半端だから「転職&フリーランス開始から半年が経った」を書くわ、10月に
— Takumi Sueda (@puhitaku) 2020年7月21日
これからの仕事と経緯
これまでフリーランスと社員を半分ずつやっていた間はフリーの仕事は特に種類を選ばずやっていたが、ついに好きな方面の仕事だけで固めることに成功した。
これからは、東京都は小金井市のNICT 国立研究開発法人情報通信研究機構で招聘専門員として週2日、アメリカはカリフォルニア州のスタートアップ HOMMA Inc. で Consultant *1 として週2日働く。もちろん、どちらもほぼ完全にリモートワークとなる。
いずれも、人づてにコンタクトを頂いたことがきっかけとなった。これについては後述。
NICT
※ 画像は公式より拝借
NICT では、世に出回っている多様なハードウェアのリバースエンジニアリングへ主に取り組むことになる。「リバースエンジニアリング」が仕事になる時点で自分でも驚きだが、実は「セキュリティ」というコンテキストで手を動かすのも初となる。
今までよく「低レイヤーってことはセキュリティやってるんですか?」と聞かれるたび「いや、そんなことはないですね」と答えては不思議がられていた。私の認識では、「セキュリティ」とは低レイヤーとか Web API とか暗号とかに限ったような概念ではない。スタック全体を、ある視点から切り取ったものだ。その切り取り方によっては、鍵の交換方法が主題になったり、カーネルのバッファオーバーフローが主題になったり、はたまたコンピューターを収納する箱の頑丈さが主題になったりする。物理から Web まですべてを同時に俯瞰することもある。つまり、セキュリティはコンピューターと同一、あるいはそれを上回るアドバンストな概念だといえる。
これまで私は「セキュリティ」を視点としたハックはしていなかった。今までの取り組みや培ってきた能力を、そのような「セキュリティ」の観点で国から求められるというのは、大変誇らしいことであり、奮い立つ思いだ。
HOMMA Inc.
※ 画像は公式より拝借
HOMMA では、設計の段階からセンサーやスマート照明などを組み込んだ住宅…つまり、真の IoT ともいえる住宅の開発を手伝うことになる。私が解説するよりも、私の出身校・津山高専が誇るきょろ先輩の記事を読んでいただいた方が、そのコンセプトについてはよく伝わるはずだ。
先輩のこの記事を当時読んで、私はやたら興奮した。コンセプトがこの上ないぐらい共感できるし、当時は転職も考えていたのでひと声かけてみようか大変悩んだ。結局、いろいろ考えに考えた結果、声をかけることは断念した。
そのような憧れた企業と先輩から声がかかってきたのが10月7日のこと。HOMMA のセンサーネットワークでは ZigBee を利用しており、そのドングルが不安定で故障しやすいことに悩んでいるのでそれを解決して欲しいとのことだった。私はふたつ返事で承諾し、あっという間に契約した。
この仕事は既に1ヶ月前から開始している。ZigBee の通信モジュールとしてよく知られる Digi XBee を片手に ZigBee の仕様書を読み、プロトコルスタック全体を司るデーモンの実装を行っている。HOMMA のコンセプトは、通信の部分に信頼性がないと全く成り立たなくなってしまう。低レイヤーの知識を駆使して、その信頼性に貢献したいと思っている。
完全フリーランスの理由
かつてヘマタイトに転職したのは、もともとフリーランスの練習がしたいからという色が強かった。週2稼働で契約して、残りはフリーランス。当然、フリーの仕事がなければまるまる休みになる。
こうして会社の解散までの半年、会社は週2日、それ以外はフリーランスか余暇という生活を続けた。これが実際心地が良かった。フリーの仕事を探す重圧も思ったほど大きくなかった上に、テーマが毎日ころころ変わることに思ったより耐性があることも発見した。
増えた可処分時間は自分の掘りたい技術を徹底して掘ると決めていたので、開発成果や外部へのアウトプットも桁違いに増えた。
Nikon の一眼を Web カメラにするソフトは今でも毎日のように使っていて、多くの人から感想を頂いたし、今でも対応機種は増え続けている。
Nintendo Switch のデジタル音声取り出しと FPGA による変換ロジック実装は久しぶりに Verilog が書けた。
そして、ブランク込みで1年ほどの期間をかけた「電子辞書への Linux 移植」の成果をまとめて公開したのが9月27日のことだ。
これが当社比で過去最高にバズり、多方面からお誘いや問い合わせをいただいた。その中にあったのが、NICT と HOMMA だった。その他にも候補がいくつかあり、中には良い条件で内定を頂いたものもあったが、しばらくの考察の後に NICT と HOMMA のお手伝いをすることに決めた。
結論として、平日は残り1日分を空けた。そこは、多方面からやってくる細かい仕事をハンドリングする日として予約している。空くことももちろんあるので、今までのような技術的な探索やアウトプットが続くようにしていきたい。
*1:いわゆる「コンサル」ではなく、純粋に開発を手伝う人